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よろしく劇場「クーリエ:最高機密の運び屋」

よろしく劇場 「クーリエ: 最高機密の運び屋」  9月23日公開

クーリエとは、本来は外交官業務の一環で、外交文書を本国と各国の大使館等の間で運搬する業務。  

1962年10月、アメリカとソ連の核戦争になったかもしれない
キューバ危機の舞台裏の実話を基にしたスパイサスペンス。
平凡な英国人セールスマンのグレヴィル・ウィンが、スパイの経験など一切ないにも関わらず、
ソ連GRUの高官ペンコフスキーが国に背いてまで入手した機密情報を,モスクワからロンドンへと運び続ける。
彼らがもたらした情報により、危機は回避された。
しかし、KGBが機密漏洩を見逃すわけがない。
二人は過酷な運命に巻き込まれていく。

前半は、コメディタッチでやり手セールスマンのウィンが、
口八丁手八丁で ソ連人脈をつくっていく様子を描いている。
次第に、尾行や盗聴を警戒する緊張感満載のサスペンスに。
二人とも家族を愛する良き夫・父であり、世界を守りたいという想いで行動する。
友情と信頼で結ばれ、非常なスパイの掟がありながらも、 互いの身を案じ守ろうとするさまは、涙腺を刺激する。
「我々のような平凡な人間から世界は変わるのかも」というセリフが効いている。

スパイものではあるが、アクションでもなく、美女も秘密兵器もでてこない。
あくまで人間ドラマである。
二人は実在の人物。

核戦争は起きず、まだ人類は続いている。 (2021年9月17日現在)

よろしく劇場 「空白」

9月10日 よろしく劇場    「空白  」  9月23日公開  


舞台は、蒲郡。
漁師、添田充(古田新太)は、気が荒く言葉も行動も威圧的。
中学生の娘・花音と二人暮らしだが、粗暴な言動で娘は何の意思表示もできない。
ある日、娘は地元のスーパーでマニキュアを万引きし、
店長・青柳直人(松坂桃李)に追われ、軽乗用車とトラックに轢かれ死亡してしまった。

父は事故に関わった人々を追求、すさまじい形相で暴走する。
一方、店長は父親の圧力やワイドショー報道、嫌がらせや中傷で追い詰められる。
最初に花音をはねた若い女性ドライバーは、罪の意識にさいなまれる。
関わったすべての人々が苦しみ、事態が悪化するばかりのなか、とんでもない事件が起きてしまう。

娘のいちばん近くにいたのに、娘について何も知らなかった。
知ろうともしなかった。
もう遅すぎるのだが、父親でありたかったのだろう。
「空白」を埋めようと娘が残した絵やマンガに触れていくうちに、
充の狂気に包まれた表情が少しづつ変化していく。

誰の身にも起こりえる出来事がリアルに描かれる重苦しい展開で、
救いがないのかと思いきや、わずかではあるが、充と直人2人に明日が見えかける。
蒲郡の風景と太陽の光が包み込んでいく。

すごい映画を見てしまった。
圧倒された。

よろしく劇場 「先生,私の隣に座っていただけませんか?」  

先生,私の隣に座っていただけませんか?
9月10日 公開


佐和子(黒木華)と俊夫(柄本佑)の漫画家夫婦。
浮気している夫とそれに気づいていながら知らないふりをする妻。
妻が描く「不倫」を題材にした漫画は、どこまでが現実で、どこからが創作なのか?
夫婦のスリリングな心理戦を描くコメディであり、やましい経験がある男にぞっとするサスペンス。

うろたえながら隠す夫と知っていながらとぼけながらカマをかける妻。
夫婦の会話は、スリリングな心理戦。
黒木華のとぼけた狂気と秘めた怒り、柄本佑の翻弄される慌てぶりが見事。

漫画が現実なのか、佐和子の創作なのか。
見ているこちらにもわからなくなり、引き込まれていく。
なんとなく心温まるエンディングをにおわせながらも、最後の最後まで目が離せない。
その結末のつけ方には恐れ入りました。

ビビる俊夫の行動のあまりに滑稽さに含み笑いと爆笑したあとに、背筋に冷たいものが走る。
妻の心理的な復讐が呼ぶ恐怖は、浮気経験のある夫にはすさまじいものだろう。
(あくまで想像で話しています・・・・・)
めちゃくちゃ面白いです。
夫婦一緒にいかがでしょうか。自己責任でね。

よろしく劇場 「浜の朝日の嘘つきども」 

「浜の朝日の嘘つきども」  
9.10(金)~  伏見ミリオン座,ユナイテッド・シネマ豊橋18,
ユナイテッド・シネマ阿久比 ,ミッドランドシネマ名古屋空港  

映画に救われた主人公がつぶれそうな映画館存続に奔走する姿を描いた作品。
脚本・監督は『百万円と苦虫女』『ロマンスドール』等のタナダユキ。
出演:高畑充希、柳家喬太郎、大久保佳代子、甲本雅裕、竹原ピストル、光石研、吉行和子など

福島県・南相馬に実在する映画館「朝日座」。  
100 年近い歴史を持つ名画座として地元住民に愛されていたが、
シネコン、配信、ユーチューブ、東日本大震災、コロナで厳しい経営状況だ。
支配人の森田(柳家喬太郎)は、売却を決意するが、
自称「茂木莉子」(高畑充希)が現れ、朝日座を立て直すという。
それは、「亡くなった恩師・茉莉子(大久保佳代子)との約束」が理由だった。

朝日座は売られて取り壊されてしまうのか。
恩師との約束やそのいきさつはどんなものなのか。

福島中央TV開局50周年記念作品として作られたTVドラマが元になっている。

柳家喬太郎VS高畑充希のやり取りが、まさに落語のようで引き込まれる。
一方、茉莉子先生役の大久保佳代子。
すぐに男に惚れてフラれるキャラ、口が悪いが本質を突く教えとやさぐれ感が見事。
臨終シーンは名場面だ。

泣いて、爆笑し、失笑し、また泣かされる。
ボロボロにされてしまった・・・・

物語、登場人物の背景には様々な問題がある。
東日本大震災、過疎、街の高齢化、技能実習制度での外国人の待遇、家族のありかた。
それらがさりげなく織り込まれていて今の社会を描いてもいる。

ありがとうございます。
いいもの見せていただきました。

よろしく劇場「ドライブ・マイ・カー」「Summer of 85」

8月20日「よろしく劇場」

図らずも、最愛の人を失った男と男の子の話。
どうしようもない喪失感をめぐる2本立て。


「ドライブ・マイ・カー」  8月20日公開 179分
村上春樹の短編小説の映画化。濱口竜介監督。
カンヌ国際映画祭脚本賞、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の独立賞も受賞。

「ドライブ・マイ・カー」は、「女のいない男たち」短編小説集の一作で70ページ。
映画化に際しては同短編小説集に収録されている他作品も要素も織り込んでいる。

舞台俳優であり演出家の家福(西島秀俊)は、
女優である愛する妻の音おと(霧島れいか)と穏やかで満ち足りた日々を送っていた。
しかし、妻は共演した俳優たちと関係をもっていた。
彼はそれに気づいていて、ある日、自宅でその現場を目撃してしまう。
しかし、問い詰めることもせず、怒ることもせずが何事もなかったようにしていた。
(それはなぜなのだろう。彼が違う意思表示をしていたら・・・)
そんなある日、音は病に倒れ突然この世からいなくなってしまう。

その2年後、愛用している真っ赤な(小説では黄色)サーブ900の運転を、みさき(三浦透子)が行うこととなる。
無口で地味な彼女の運転は、乗っていることを忘れるくらいにスムーズで上手だった。
招かれた演劇祭で、死んだ音と肉体関係があった男の一人である俳優・高槻(岡田将生まさき)と出会う。
稽古やバーでの高槻とのやりとりや、みさきの運転する車内での会話を通じて
妻を失った行き場のない喪失感や、それまで目を背けてきたものに気付く家福の心理が描かれていく。

どんなに愛していても理解したつもりになっていても、
自分以外の人のすべてを知ることはできない。
ありのままに受け止めるしかないし、大切な人を失っても残された者は人生を生きていくしかない。

文学的で静かで、映像が美しい3時間。
西島秀俊の肉体美のようにぜい肉のない映画。
泣かせたり、わかりやすく盛り上がる映画ではない。説明的なセリフもない。
たぶん、何度も鑑賞に堪えうる、そのたびに受け取るものが発見できる作品だろう。


「Summer of 85」 8月20日公開  

1985年夏、フランス・ノルマンディーの海辺。
2人の少年、アレックスとダヴィドが出会い、永遠に別れるまでの6週間とその後を描いた作品。

ヨットで一人沖に出た16歳のアレックスは、突然の嵐に見舞われ転覆してしまうが、18歳のダヴィドに助けられる。
バイクに2人乗りしたり、遊園地やディスコに行ったり片時も離れないうちに、親友からもっと深い仲になる。
アレックスにとってはこれが初恋だった。
ある日、女の子ケイトが現れたことで、二人の気持ちはすれ違ったまま、
バイク事故でダヴィドは帰らぬ人となってしまう。

色鮮やかでノスタルジックな映像美と、80年代ヒットソングの数々で彩られた、少年たちの美しくも儚い夏。

「理想の親友」から「愛し合う仲」になる二人の少年の姿が、港街や海、バイクで駆け抜ける田園風景に映える。
男同士の恋愛は理解できないが、思春期の不器用な恋模様にはキュンとなる甘酸っぱさを感じ、
愛する人を永遠に失ってしまった喪失感と、それでも続く人生にほろ苦さを感じる。
そうやって少年は大人になるのだ。