安蒜豊三 きょうもよろしく

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よろしく劇場「ドライブ・マイ・カー」「Summer of 85」

8月20日「よろしく劇場」

図らずも、最愛の人を失った男と男の子の話。
どうしようもない喪失感をめぐる2本立て。


「ドライブ・マイ・カー」  8月20日公開 179分
村上春樹の短編小説の映画化。濱口竜介監督。
カンヌ国際映画祭脚本賞、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の独立賞も受賞。

「ドライブ・マイ・カー」は、「女のいない男たち」短編小説集の一作で70ページ。
映画化に際しては同短編小説集に収録されている他作品も要素も織り込んでいる。

舞台俳優であり演出家の家福(西島秀俊)は、
女優である愛する妻の音おと(霧島れいか)と穏やかで満ち足りた日々を送っていた。
しかし、妻は共演した俳優たちと関係をもっていた。
彼はそれに気づいていて、ある日、自宅でその現場を目撃してしまう。
しかし、問い詰めることもせず、怒ることもせずが何事もなかったようにしていた。
(それはなぜなのだろう。彼が違う意思表示をしていたら・・・)
そんなある日、音は病に倒れ突然この世からいなくなってしまう。

その2年後、愛用している真っ赤な(小説では黄色)サーブ900の運転を、みさき(三浦透子)が行うこととなる。
無口で地味な彼女の運転は、乗っていることを忘れるくらいにスムーズで上手だった。
招かれた演劇祭で、死んだ音と肉体関係があった男の一人である俳優・高槻(岡田将生まさき)と出会う。
稽古やバーでの高槻とのやりとりや、みさきの運転する車内での会話を通じて
妻を失った行き場のない喪失感や、それまで目を背けてきたものに気付く家福の心理が描かれていく。

どんなに愛していても理解したつもりになっていても、
自分以外の人のすべてを知ることはできない。
ありのままに受け止めるしかないし、大切な人を失っても残された者は人生を生きていくしかない。

文学的で静かで、映像が美しい3時間。
西島秀俊の肉体美のようにぜい肉のない映画。
泣かせたり、わかりやすく盛り上がる映画ではない。説明的なセリフもない。
たぶん、何度も鑑賞に堪えうる、そのたびに受け取るものが発見できる作品だろう。


「Summer of 85」 8月20日公開  

1985年夏、フランス・ノルマンディーの海辺。
2人の少年、アレックスとダヴィドが出会い、永遠に別れるまでの6週間とその後を描いた作品。

ヨットで一人沖に出た16歳のアレックスは、突然の嵐に見舞われ転覆してしまうが、18歳のダヴィドに助けられる。
バイクに2人乗りしたり、遊園地やディスコに行ったり片時も離れないうちに、親友からもっと深い仲になる。
アレックスにとってはこれが初恋だった。
ある日、女の子ケイトが現れたことで、二人の気持ちはすれ違ったまま、
バイク事故でダヴィドは帰らぬ人となってしまう。

色鮮やかでノスタルジックな映像美と、80年代ヒットソングの数々で彩られた、少年たちの美しくも儚い夏。

「理想の親友」から「愛し合う仲」になる二人の少年の姿が、港街や海、バイクで駆け抜ける田園風景に映える。
男同士の恋愛は理解できないが、思春期の不器用な恋模様にはキュンとなる甘酸っぱさを感じ、
愛する人を永遠に失ってしまった喪失感と、それでも続く人生にほろ苦さを感じる。
そうやって少年は大人になるのだ。