アナウンサー 一覧に戻る

直球勝負!大澤広樹

  • radiko.jp

カレンダー

ブログ内検索

RSS2.0

[login]

a-blog cms

『27年ぶりのスローカーブ』 日々

26日、ネットニュースの見出しが、私の高校2年のころを鮮明に思い出させてくれました。その見出しは【「スローカーブを、もう一球」のモデル 川端俊介さん死去】。1981年春の選抜高校野球に群馬県・高崎高校のエース投手として出場したのが川端さんで、その甲子園出場までの過程を故山際淳司さんが描いた作品が『スローカーブを、もう一球』です。『江夏の21球』で知られる山際さんですが、私はこの『スローカーブを、もう一球』が大好きでした。私が読んだのは高校2年のときで、当時、野球部で投手だった自分に刺さったのでしょう。何度も読み返しました。高校卒業後は再読することはなかったのですが、川端さんの訃報を知り、きのう実家の本棚を探してみると、当時のままありました。



山際淳司さんのエッセイはとても淡々として、あっさりしているんです。村上龍氏が『「きっかけ」「苦労」「秘訣」の三点セットを必ず聞かれるが、そんなものはない、と答えるとインタビュアーが絶句する』と話していましたが、世に出ている成功者について書かれたエッセイなどの類はほぼその「きっかけ」「苦労」「秘訣」という文脈です。そこに面白さを感じ、興味を惹かれることは多々ありますし、私も好きです。しかし最近は何でもかんでもその方向でちょっと食傷気味…というところも否定はできません。山際さんのエッセイはそういった押し付け、暑苦しさがなく、淡々と事実、取材に基づいて言葉を積み重ねていきます。

この『スローカーブを、もう一球』も、進学校の野球部で、汗や泥に塗れた練習とは程遠く、特別に抜群の身体能力があったわけではない川端選手がいつスローカーブを投げるのか、というだけのことなんです。なのに27年ぶりに読んだこの作品に、山際さんの文章に、あっという間に引き込まれていきました。なんとも言えない清涼感。この文章のように、自分がプロ野球を実況できたらいいのになぁと、強く思いました。

私は『スローカーブを、もう一球』に影響されて、高校2年のとき、試合で川端選手のようにスローカーブを投げたことがあります。楽しかったなぁ。ただ先輩に「審判の印象が悪いから止めろ」「守りづらいから止めろ」と厳しく言われて、投げなくなってしまいました。あのまま磨いていけば甲子園に出ていたかもなぁ(笑い)。強豪校相手にからかうようにスローカーブを投げる川端さんの姿、とてもカッコよかったんです。文字、言葉からの勝手な想像なのですが。

スローカーブと共に甲子園の舞台を踏んだ川端さん、そしてその軌跡を爽やかに描いた山際さん、お二人は若くして世を去ることになってしまいましたが、お会いしたこともないお二人の存在は私の心の中で生き続けています。ぜひ読んでみてください。