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東海ラブストーリー【第6話】 東海ラブストーリー

はぁはぁ。はぁはぁ。
間に合ってくれ。神にも祈る気持ちだ。もう足も心臓も悲鳴を上げている。だけど止まるわけにはいかない!
こんなに全力で走るだなんていつ以来だろう。なんて考えながら右手を目一杯伸ばし、コンマ1秒でも早く改札をすり抜ける。ホームに続く階段を足だけの感覚で降り、最後の数段を飛び降りた。と、同時にホームを見たその瞬間!無情にも電車のドアがピタリと閉まった。
言葉にならないとはこのことだ。
何事もなさげにホームを歩き、ゆっくりと電車が発車するのを横目で見るしかなかった。電車の中の人の思っていることを当ててやろう。
(ああ、この人終電のがしちゃったぁ)
ああ、そうだよ、やっちまったよ!
俺は息も絶え絶えホームのベンチにどっかり腰掛けた。地下鉄の無機質な天井を仰いで考えた。
何でいつももう少しの所で大事なものを逃してしまうのだろう。今日の契約の件もそう、学生時代の恋愛だって…まぁ、それは何年も前の話だ。
給料前のタクシー代、およそ一万円は辛い。スマホを取り出しもう寝てるであろう彼女に、今日は会社に泊まるとLINEを入れる。しばらくの間ボーッとしていたら駅員に外へうながされてしまった。
ほとんど明かりがなくなった夜の世界。遠くのほうに見慣れた看板が小さく光っている。(ああ、あそこでハンバーガーでもテイクアウトして会社に戻ろう。)ため息をついて一歩目を踏み出したその時、反対車線に止まったタクシーに釘付けになった。タクシーにではない、降りてきた女性に。
「終電行っちゃったぞー」
大きな声で茶目っ気たっぷりのみすずの姿に。声の出ない俺に向かってみすずが駆け寄ってくる。
「久しぶり、大前くん。」
「おお、びっくりした」
「さっきの終電に乗ってたら、大前くんが乗り過ごしてたから戻って来ちゃった」
思わず吹き出して、二人して大笑いした 。
偶然の再会で二人は時間が経つのを忘れて話をした。
金曜日の25時、止まっていた歯車が再び動き出した。

 

ラジオネーム ひとりかくれんぼ さんの作品




 


次回の3ワードは「抱きしめる」「さよなら」「青春」です。第7話お待ちしています。

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